案 HR 261004の3 上告理由書
仮番号 令和8年(行サ)第15号
行政文書開示に係る原本不存在確認・履行義務違反確認請求上告事件
上告人
被上告人 国
上告理由書(日高亮訴訟)
令和8年10月●日
最高裁判所 御中
上告人
第3 上告理由の要旨
中村さとみ裁判官(二審担当)は、上告人が控訴状において明示した次の3点の控訴理由(=変更請求事項)を摘示しながら、これらに対する個別具体的な判断を示さず、篠田賢治判決(一審)の理由を引用しただけで済ませ、本件の日高亮訴訟控訴を口頭弁論を経ないで棄却した。
上告人(控訴人)は、(口頭弁論の範囲等)第1項に拠り、変更請求事項(控訴理由)を以下3点提示した。
この変更請求事項3点は、高裁が法律審として行うべき、職権調査事項に該当する事項である。
変更請求事項1
篠田賢治判決(原審)は、訴状のどの部分が不適法かを特定しておらず、重大な訴訟手続違法があること。
変更請求事項2
篠田賢治判決(原審)が、補正可能性を検討せず、民事訴訟法原判決は、補正可能性を無視し、民訴法140条の適用要件を欠いたまま却下しており違法であること。
変更請求事項3
訴状の記載は明確であり、篠田賢治判決(原審)の「不適法」判断は事実誤認であること。
本件の日高亮訴訟で問題となるのは、訴状の記載内容に関する単なる事実認定の当否ではない。
問題は、篠田賢治判決(原審)が、第一審の訴訟手続の適法性を争う上告人の控訴理由を摘示しながら、その理由の当否について判断を示さず、補正又は釈明の機会を与えないまま、口頭弁論を経ずに控訴を棄却したことである。
これは、民事訴訟法140条、253条1項3号又は4号、296条1項及び297条の解釈適用を誤り、上告人の実効的な反論及び防御の機会を奪ったものである。
よって、篠田賢治判決(原審)には、憲法31条の趣旨に反する重大な訴訟手続違反がある。
第4 憲法31条の定める適正手続保障の侵害
・憲法31条は、直接には刑事手続について定めた規定であるが、国家機関が国民の権利利益に重大な影響を及ぼす手続を行う場合には、恣意的な手続によることなく、適正な手続を保障すべきであるとの基本原則を含む。
・本件の日高亮訴訟では、第一審及び控訴審の両方において、以下の状況下で終局が行われた事実。
口頭弁論は開かれず、訴状の不備とされた部分の特定は明示されず、補正可能性についての釈明は行われず、補正の機会の付与である補正命令は行われず、控訴理由に対する個別判断が行われず、と言う状況で、本件の日高亮訴訟訴訟が終局させられた事実。
・上告人は、第一審判決の訴訟手続上の違法を控訴理由として具体的に主張した。一方、中村さとみ判決(二審)は、その控訴理由を判決書に摘示しただけで済ませ、控訴理由の当否について実質的な判断を示さなかった。
・判断を示さなかったと言う手続は、当事者の主張を聴き、その主張に対して理由を示して判断するという裁判手続の基本的要請を欠いている。
以下、3つの控訴理由(変更請求事項)に対応させて、その違法を具体的に述べる。
XXX〇 第3の控訴理由(変更請求事項)に対する判断の欠落
1 上告人の控訴理由(変更請求事項)
上告人は、控訴状において、次のとおり主張した。
原判決は、訴状のどの部分が不適法かを特定していない点で、重大な訴訟手続違法がある。
この主張は、単に第一審判決の結論に不服を述べたものではない。
民事訴訟法140条により口頭弁論を経ないで訴えを却下するためには、まず、訴えが不適法であることに加えて、その不備が補正不能であることが必要である。
したがって、同条を適用するためには、少なくとも、
1 訴状のどの記載が不備なのか
2 どの訴訟要件を欠いているのか
3 なぜその不備を補正することができないのか
が具体的に判断されなければならない。
不備の対象が特定されなければ、当事者は、補正すべき事項を認識することも、裁判所の判断に対して反論することもできないからである。
2 原判決の判示
原判決は、判決書第2の4において、上告人の控訴理由を次のとおり摘示した。
原判決は、訴状のどの部分が不適法かを特定していない点で、重大な訴訟手続違法がある。
ところが、原判決は、第3の「当裁判所の判断」において、次のとおり判示しただけである。
当裁判所も、本件の日高亮訴訟訴えはいずれも不適法であり、また、その不備の内容に照らし、これを補正することができないと判断する。
その理由は、原判決「事実及び理由」の第2の1ないし4のとおりであるから、これを引用する。
さらに、原判決は、
控訴人の控訴理由はいずれも採用することができない。
と判示した。
3 判断の欠落
原判決は、上告人の第1の控訴理由を摘示している。
しかし、その判断部分では、
1 訴状のどの文言が不備なのか
2 どの請求について、どの訴訟要件が欠けているのか
3 第一審判決が不適法部分を十分に特定していたといえるのか
4 上告人の「不適法部分が特定されていない」との主張が、なぜ採用できないのか
を一切示していない。
「原判決を引用する」との判示は、引用された第一審判決自体が不適法部分を特定していないという控訴理由に対する回答にはならない。
上告人は、第一審判決の説示内容そのものが不十分であると主張したのである。それにもかかわらず、その第一審判決をそのまま引用するだけでは、控訴理由に対する判断となり得ない。
4 民事訴訟法253条違反
民事訴訟法253条1項は、判決書に理由を記載することを求めている。
判決理由は、単に何らかの文章が存在すれば足りるものではない。少なくとも、当事者が争った主要な法律上の問題について、主文に至る判断過程を理解できる程度に理由が示される必要がある。
本件の日高亮訴訟では、第1の控訴理由に対する判断が示されていないため、上告人は、
1 原判決が第一審判決のどの説示を根拠としたのか
2 なぜ不適法部分の特定が不要とされたのか
3 なぜ上告人の控訴理由が排斥されたのか
を知ることができない。
よって、原判決には、民事訴訟法253条1項所定の理由記載義務に反する疑いがある。
5 憲法31条への接続
不適法部分を特定しないまま訴えを却下し、さらに、その点を争う控訴理由にも応答しないことは、当事者から補正及び反論の対象を知る機会を奪うものである。
これは、当事者の実効的な手続参加を保障せずに訴訟を終局させるものであり、憲法31条の趣旨に反する。
第4 第2の控訴理由である補正可能性についての判断欠落
1 上告人の控訴理由
上告人は、控訴状において、次のとおり主張した。
原判決は、補正可能性を無視し、民訴法140条の適用要件を欠くにもかかわらず適用し、却下した点で違法である。
本件の日高亮訴訟訴状には、上告人の主張によれば、
1 主位的請求と予備的請求との関係
2 義務付け訴訟及び確認訴訟の区別
3 確認の利益を基礎付ける事実
4 行政機関職員の説明と閲覧文書の状態との矛盾
5 釈明処分の申立て
6 書証提出及び検証を求める内容
が記載されていた。
したがって、裁判所が訴訟類型、請求の趣旨又は確認の利益に疑問を持ったのであれば、求釈明又は補正の指示によって、その疑問点を明確にする余地があった。
2 原判決の判示
原判決は、第一審の判断について、
原審は、本件の日高亮訴訟訴えはいずれも不適法であり、また、その不備の内容に照らし、これを補正することができないとして、行訴法7条、民訴法140条により、口頭弁論を経ないでこれらを却下した。
と摘示した。
そして、自らの判断として、
当裁判所も、本件の日高亮訴訟訴えはいずれも不適法であり、また、その不備の内容に照らし、これを補正することができないと判断する。
と判示した。
しかし、原判決は、
1 補正対象となる不備
2 想定される補正の内容
3 補正によっても適法にならない理由
4 釈明によって疑問点を解消できない理由
を何ら示していない。
3 最高裁平成8年5月28日判決
最高裁平成8年5月28日第三小法廷判決は、訴えが不適法な場合でも、
当事者の釈明によっては訴えを適法として審理を開始し得ることもある
として、そのような可能性がある場合に、
当事者にその機会を与えず直ちに民訴法202条を適用して訴えを却下することは相当とはいえない
と判示している。
同判決当時の民事訴訟法202条は、現行法の民事訴訟法140条に対応する規定である。
同判決が口頭弁論を経ない却下を許容したのは、
訴えの許されないことが明らかであって、当事者のその後の訴訟活動によって訴えを適法とすることが全く期待できない場合
である。
したがって、口頭弁論を経ない却下が許されるためには、単に裁判所が不適法と判断したというだけでは足りない。
当事者の釈明、請求の整理又は補正によっても適法化する可能性が全くないことが必要である。
4 本件の日高亮訴訟への適用
本件の日高亮訴訟では、訴状に複数の請求が記載され、主位的請求及び予備的請求の関係も記載されていた。
仮に、その訴訟類型又は請求相互の関係に不明確な部分があったとしても、
1 請求の趣旨を整理する
2 主位的請求と予備的請求を明確にする
3 確認対象となる法律関係を特定する
4 確認の利益を基礎付ける事実を補充する
5 義務付けの対象となる処分又は行政庁の義務を特定する
などの補正を行う余地があった。
少なくとも、原判決は、そのような補正によってもなお適法化することが全く期待できない理由を示していない。
したがって、本件の日高亮訴訟は、最高裁平成8年5月28日判決が口頭弁論を経ない却下を許容した「適法化することが全く期待できない場合」に該当するかどうかについて、必要な判断が示されていない。
5 民事訴訟法140条違反
原判決は、補正不能性を具体的に認定しないまま、民事訴訟法140条及び302条1項を適用して、口頭弁論を経ないで控訴を棄却した。
しかし、同法140条の例外的な手続を用いるためには、補正不能性に関する具体的な判断が必要である。
本件の日高亮訴訟では、
1 不備の特定がない
2 補正方法の検討がない
3 求釈明がない
4 補正の機会が与えられていない
5 補正不能性の理由が示されていない
という状況にある。
よって、原判決は、民事訴訟法140条の適用要件を具体的に判断しないまま同条を適用したものであり、同条の解釈適用を誤ったものである。
6 憲法31条への接続
補正又は釈明によって訴えを適法にする余地があるにもかかわらず、その機会を一切与えず、補正不能との結論だけを示して訴訟を終局させることは、当事者の審理を受ける機会を実質的に奪うものである。
これは、上告人の手続参加権及び防御権を侵害し、憲法31条の趣旨に反する。
第5 第3の控訴理由に対する判断遺脱
1 第3の控訴理由の上告理由上の位置付け
上告人は、控訴状において、
訴状の記載は明確であり、原判決の不適法認定は事実誤認である。
と主張した。
しかし、上告審において、単なる事実誤認は上告理由にならない。
そこで、本上告理由書では、「第一審判決の事実認定が誤っている」という形では主張しない。
本上告における問題は、上告人が訴状の具体的な記載箇所を挙げて不適法判断を争ったにもかかわらず、原判決がその主張に対する判断を示さなかったことである。
すなわち、本項の上告理由は、事実誤認ではなく、判決に影響を及ぼす重要な控訴理由についての判断遺脱である。
2 上告人が控訴審で示した事項
上告人は、控訴状において、訴状に次の事項が記載されていると主張した。
1 主位的請求が義務付け訴訟であること
2 予備的請求が確認訴訟であること
3 主位的請求と予備的請求を併合した理由
4 行政文書の開示請求及び閲覧の経緯
5 閲覧に供された文書の状態
6 行政機関職員の説明と文書の状態との矛盾
7 確認の対象となる法律関係
8 確認の利益を基礎付ける事情
9 義務付けの必要性を基礎付ける事情
10 釈明処分、書証提出及び検証を求める趣旨
これらの主張は、第一審判決が不適法と判断した各請求について、少なくとも補正又は釈明によって適法化する余地があったことを基礎付けるものである。
3 原判決の判断
原判決は、上告人の第3の控訴理由を判決書中に摘示した。
しかし、その判断部分では、
本件の日高亮訴訟訴えはいずれも不適法である
控訴人の控訴理由はいずれも採用することができない
と述べたのみである。
原判決は、
1 訴状にどのような訴訟類型が記載されていたのか
2 上告人が示した各記載がなぜ請求の特定として不十分なのか
3 確認の利益を基礎付ける主張がなぜ不十分なのか
4 これらの主張を補正しても適法にならないのはなぜか
について判断を示していない。
4 最高裁平成11年6月29日判決
最高裁平成11年6月29日第三小法廷判決・裁判集民事193号411頁は、原判決が重要な再抗弁について判断しなかった事案について、
原判決には、判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱した違法がある
と判示した。
同判決は、判断遺脱が直ちに民事訴訟法312条2項6号の「判決に理由を付さないこと」に当たるとはしなかった。
その一方で、
右判断の遺脱によって、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある
として、民事訴訟法325条2項を参照し、職権で原判決を破棄して事件を原裁判所に差し戻した。
この判例によれば、当事者の重要な主張について判断が遺脱され、その主張について判断すれば判決の結論が変わり得る場合には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反となり得る。
5 本件の日高亮訴訟における判断の重要性
上告人の第3の控訴理由は、訴状の具体的な記載内容を根拠として、
1 本件の日高亮訴訟各請求が特定されていること
2 少なくとも補正又は釈明の余地があること
3 民事訴訟法140条による即時却下の要件を満たさないこと
を主張するものであった。
この主張が認められれば、第一審判決を取り消して、本件の日高亮訴訟を第一審裁判所に差し戻すべきことになる。
したがって、この控訴理由は、原判決の結論に直接影響する重要な事項である。
それにもかかわらず、原判決は、その当否について具体的な判断を示していない。
よって、原判決には、最高裁平成11年6月29日判決のいう、判決に影響を及ぼすべき重要な事項についての判断遺脱がある。
6 理由不備との区別
本件の日高亮訴訟で「判断遺脱」と「理由不備」は区別しなければならない。
最高裁平成11年6月29日判決によれば、重要な主張について判断が欠落していても、判決書に記載された理由だけを見れば主文に至る論理が形式的に完結している場合には、直ちに民事訴訟法312条2項6号の理由不備となるわけではない。
したがって、本件の日高亮訴訟では、
原判決が短いから理由不備である
と主張するものではない。
本件の日高亮訴訟で主張するのは、
原判決が、判決の結論を左右する3つの控訴理由を摘示しながら、その当否について判断していない
という判断遺脱である。
そして、その判断遺脱によって民事訴訟法140条及び302条1項の適用の当否に関する審理が欠落している以上、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある。
7 憲法31条への接続
当事者が第一審の手続違法を具体的に指摘し、その判断を求めたにもかかわらず、控訴裁判所がその主張に対する判断を示さないまま控訴を棄却することは、実効的な不服申立ての機会を失わせるものである。
上告人は、第1の控訴理由から第3の控訴理由までについて、形式的には主張を提出する機会を得た。
しかし、裁判所がその主張に応答せず、第一審判決の引用だけで控訴を排斥したのであれば、実質的には審理を受けたとはいえない。
よって、原判決による重要事項の判断遺脱は、上告人の実効的な手続参加及び防御の機会を奪うものであり、憲法31条の趣旨に反する。
第6 3つの手続違法の相互関係
本件の日高亮訴訟の3つの控訴理由は、相互に独立した単なる不服ではない。
これらは、次の一連の手続として結び付いている。
第1に、第一審判決は、不適法とする対象を具体的に特定しなかった。
第2に、不適法とされた対象が特定されていないため、上告人には補正すべき事項が示されなかった。
第3に、補正すべき事項が示されず、補正の機会も与えられないまま、第一審は補正不能と判断して本件の日高亮訴訟訴えを却下した。
第4に、上告人は、控訴状において、この一連の手続違法を3つの控訴理由として具体的に指摘した。
第5に、控訴審は、その3つの控訴理由を判決書に摘示しながら、個別具体的な判断を示さず、第一審判決を引用して、口頭弁論を経ないで控訴を棄却した。
したがって、本件の日高亮訴訟は、単に判決理由の表現が簡略であったという事案ではない。
不適法部分の不特定、補正機会の不付与、補正不能性についての理由欠落及び控訴理由に対する判断遺脱が重なり、上告人が本案審理を受ける可能性が失われた事案である。
この一連の手続は、民事訴訟法140条が予定する例外的な無弁論却下の限界を超え、上告人の手続上の権利を実質的に奪ったものである。
第7 原判決を引用したことだけでは控訴理由への判断にならないこと
原判決が第一審判決を引用したこと自体を直ちに違法と主張するものではない。
控訴審判決において、第一審判決の理由を引用することは、それ自体として許され得る。
しかし、本件の日高亮訴訟において上告人が争ったのは、引用対象である第一審判決の理由そのものが、
1 不適法部分を特定していない
2 補正不能性の理由を示していない
3 訴状の具体的記載に対応していない
という点であった。
したがって、控訴審が第一審判決を引用するだけでは、第一審判決自体への批判に回答したことにはならない。
少なくとも控訴審は、
1 第一審判決のどの説示によって不適法部分が特定されているのか
2 第一審判決のどの説示によって補正不能性が判断されているのか
3 上告人が控訴状で示した訴状の各記載をどのように評価したのか
を明らかにする必要があった。
原判決は、これらを明らかにしないまま、
控訴人の控訴理由はいずれも採用することができない
と結論付けた。
この判示は、3つの控訴理由に対する実質的判断を欠いている。
第8 判決に及ぼす影響
原判決が、第1の控訴理由について、不適法部分を具体的に特定する必要があると判断していれば、第一審判決の手続を適法と評価することはできなかった可能性がある。
原判決が、第2の控訴理由について、最高裁平成8年5月28日判決の基準に従って補正可能性を検討していれば、本件の日高亮訴訟が「その後の訴訟活動によって訴えを適法とすることが全く期待できない場合」に当たらないと判断された可能性がある。
原判決が、第3の控訴理由について、訴状に記載された訴訟類型、請求相互の関係、確認の利益及び主要事実を具体的に検討していれば、少なくとも直ちに補正不能とはいえず、釈明又は補正の機会を与えるべきであると判断された可能性がある。
したがって、これらの判断の欠落は、原判決の結論に影響を及ぼさない軽微なものではない。
本件の日高亮訴訟各控訴理由について適切な審理及び判断が行われていれば、第一審判決を取り消し、本件の日高亮訴訟を東京地方裁判所に差し戻すという結論に至る可能性があった。
よって、原判決の判断遺脱及び審理不尽は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反に当たる。
第9 結論
以上のとおり、原判決は、
1 第一審判決が不適法部分を特定していないとの控訴理由
2 補正可能性を検討せず民事訴訟法140条を適用したとの控訴理由
3 訴状の具体的記載を示して不適法判断を争った控訴理由
を判決書に摘示しながら、その当否について個別具体的な判断を示さなかった。
特に、補正又は釈明によって訴えを適法にする可能性について、何ら判断しないまま口頭弁論を経ずに控訴を棄却したことは、最高裁平成8年5月28日第三小法廷判決が示した基準に反する。
また、原判決が、判決の結論に影響する重要な控訴理由について判断を示していないことは、最高裁平成11年6月29日第三小法廷判決・裁判集民事193号411頁のいう、判決に影響を及ぼすべき重要事項についての判断遺脱に当たる。
これらの手続違法は、単なる事実認定の誤りではない。
上告人に、不適法とされた事項を知る機会、補正する機会、反論する機会及び控訴理由について実質的な審理を受ける機会を与えないまま、訴訟を終局させた重大な訴訟手続違反である。
よって、原判決は、民事訴訟法140条、253条、296条、297条及び302条の解釈適用を誤り、憲法31条の趣旨に反するものであるから、破棄を免れない。
最高裁判所においては、原判決を破棄し、さらに必要な審理及び判断を尽くさせるため、本件の日高亮訴訟を原審に差し戻すべきである。
以上
主要な修正点
1 「事実誤認」を上告理由から外しました
変更前:
原判決の不適法認定は事実誤認である。
変更後:
上告人が訴状の具体的記載を示して不適法判断を争ったにもかかわらず、原判決がその控訴理由について判断を示していない。
これにより、事実認定への不服ではなく、判断遺脱及び判決に影響を及ぼす法令違反として構成しています。
2 平成11年6月29日判決を正確に位置付けました
この判例は、判断遺脱を直ちに民訴法312条2項6号の理由不備とはしていません。そこで、
判断遺脱=絶対的上告理由としての理由不備
とは書かず、
判断遺脱=判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反として職権破棄の対象
と整理しました。
3 平成8年5月28日判決の両面を記載しました
同判決は、補正機会を与えるべき場合があるとする一方、適法化が全く期待できない場合には無弁論却下を許容しています。
そのため、本件の日高亮訴訟では、
本件の日高亮訴訟が「適法化することが全く期待できない場合」に当たることを原判決が具体的に示していない
という形で区別しました。
4 確認できない判例は削除しました
事件内容又は年月日を確認できなかった判例を多数並べるよりも、射程を確認できた2件を正確に使う構成にしています。これにより、判例の誤引用によって上告理由書全体の信用性が損なわれることを避けました。
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